インドネシアの高速鉄道プロジェクトが、想定以上の困難に直面しています。このプロジェクトは、東南アジア初の高速鉄道として大々的に宣伝され、日本が長年にわたり準備していたものですが、2014年にインドネシア政府が中国の提案を受け入れたことで、計画は大きく変わりました。中国は、インドネシア政府に金銭的負担をかけないという魅力的な条件を提示し、プロジェクトを引き継ぐことになりました。
2023年10月、ジャカルタからバンドンまでの約150kmを結ぶ高速鉄道がようやく開業しました。従来は3時間以上かかっていた区間が、最速46分に短縮されましたが、開業直後から中国メディアは「このプロジェクトは失敗ではないか」という声を上げ始めました。工事中の問題や新型コロナウイルスの影響で開通が遅れ、当初の予算を大幅に超過した結果、総コストは約72億ドルに膨れ上がりました。
また、建設現場では資材の盗難事件も発生し、警備員が関与していたことが報じられました。このような問題が続く中、インドネシア側は中国に十分な支援と協力を求めていたものの、現地の事情を理解せずに計画を進めた中国側の責任も指摘されています。
さらに、財政問題も深刻です。中国側は当初、インドネシア政府に金銭的負担をかけないと約束しましたが、実際には投資回収の見通しが立たず、ある報道によればこの路線が黒字化するまでに最短でも40年かかるとされています。駅の位置が不便であることや、運賃が現地の所得水準に比べて高いことも、利用者の増加を妨げる要因となっています。
今後、インドネシア政府は延伸計画を見直す必要に迫られています。当初、中国側は延伸すれば採算が取れると主張していましたが、現状ではその経済的合理性が乏しいことが明らかになりました。インドネシア政府は、延伸計画への入札を中国以外の国々にも広げる考えを示しており、日本や韓国、ドイツなどの参加を呼びかけていますが、各国の反応は冷ややかです。
一方、日本の新幹線技術に対する信頼は高まり続けています。特に、インドとの協力プロジェクトが着実に進展しており、日本は単に鉄道を建設するだけでなく、現地生産やメンテナンス技術の移転にも注力しています。インド鉄道省の関係者は、日本との協力により自前で製造できるようになることを期待しており、長期的な発展を選択する姿勢を示しています。
インドネシアにおける高速鉄道プロジェクトは、短期的な利益を追求した結果、長期的な信頼と安全性を犠牲にすることになりました。安物買いのゼニしないという教訓を胸に、今後の国際協力における判断が注目されます。この経験が、他国にとっても重要な教訓となることでしょう。