コメの値段、なぜ高い? 背景に農家の苦境も 「コメを作れない」と廃業続出
近年、日本でコメの価格が急騰している。特に、昨年と比較して「こしひかり」の価格が約1.7倍に達し、多くの消費者からは悲鳴が上がっている。この状況を受けて、政府は保有する備蓄米の放出を発表し、価格の下落を目指す方針を示した。
価格高騰の背景には、一部の業者による在庫のため込みや流通の停滞が指摘されている。これにより、農家たちは「米を作れない」との嘆きの声を上げており、農業の現場での苦境が浮き彫りとなっている。特に、農水省のデータによれば、コメ作りによる年間平均所得はわずか10万円にも満たず、多くの農家が廃業に追い込まれている状況だ。
戦後、日本の農業はコメ作りを中心に発展してきたが、1970年代から始まった生産調整政策や貿易自由化の波により、農家は厳しい状況に置かれている。農産物の自由化が進む中で、米だけは特別に保護されてきたが、近年はその特権も薄れている。これにより、一部の中小農家が淘汰され、大規模農家だけが生き残る構図が形成されている。
また、農業従事者の数はこの20年で半減し、平均年齢は69歳に達するなど、高齢化も進行中である。これにより、若い世代の農業離れが顕著になっており、持続的な米作りが危機的な状況に陥っている。専門家は「このままでは日本の稲作が崩壊する」と警鐘を鳴らしている。
このような状況に対して、農業政策の見直しが求められている。政府は農家を支援し、持続可能な農業を実現するための仕組みを構築する必要がある。消費者が高い価格で米を購入する一方で、生産者の所得は低迷しており、両者のバランスを取ることが重要である。
米は日本人の主食であり、食卓に欠かせない存在である。今後、農業の未来を見据えた政策が求められる中で、消費者、農家、政府が連携し、持続可能な農業を実現するための道筋を探る必要がある。